昨日、こちらで紹介した芳村弘道先生による書評です。書評の書評みたいになりますけど、ご容赦を。(私のは書評ではなくて、単なる紹介ですが。。。)
長い歴史を持つ中国には、多くの名勝・旧跡があります。そしてそれは漢詩の中にも詠み込まれ、日本でいうところの歌枕のように機能して、その詩の情趣を膨らませています。名勝・旧跡にある種のイメージが生ずるわけです。これを「詩跡」と名付けているそうですが、中国にはこの「詩跡」に当たるものの研究ないらしく、日本で学問の一領域として立ち上がり、その成果をまとめられたのが『中国詩跡事典』ということだそうです。もう、これだけでも、『中国詩跡事典』というのは画期的な書籍なのだということがわかりますが、芳村先生の書評では、『中国詩跡事典』がどのような書籍なのか、その特徴を具体的な例を引き紹介されています。また一方で、不十分な箇所、漢詩引用の誤り(不適切)なども指摘されております。このような指摘が、いつか出るであろう次の版に反映されていき、「詩跡」研究が進展を見せるということになるのだろうと思われます。最後に芳村先生自身が、『中国詩跡事典』を活用することで、研究されている「詞」の訳注に活かすことができたとして結ばれています。
私が2015年3月に出版された『中国詩跡事典』を入手したのは、実に幸運なことに古本としてでした。新刊書で買おうと思ったのですが、定価8,000円(税別)で、ちょっと躊躇っていたのです。そこには上述のような「詩跡」研究の意義も全然知らなかったこともあり、優先度をさげていたのでした。それが幸運にも古書店で発見し、しかもセール中ということもあって、お安く入手できたのでした。芳村先生の書評を読み、自分はなんとラッキーだったんだと感動しております。
さて、先ほど中国の「詩跡」は日本の歌枕のようだと書きましたが、実は、私が学生の時に国文学の授業を受けていたのところ、そのときの先生が、「これは良い本で、一冊持っていて損はないよ」と次の本を薦めてくださったのです。私は国文学ではなく中国文学を専攻するつもりでしたから、別に買わなくても全然良かったのですが、先生の薦めのままに買っていたのです。本棚の肥やしになっていたのですが、何ということでしょう、『中国詩跡事典』が現れて、芳村先生の書評に導かれて、繋がりました。国文学の先生の仰る通り損はありませんでした。
中国の「詩跡」研究が進展すれば、日中の「詩跡(歌枕)」に関する比較研究も興るのではないかと思います。芳村先生の書評を通じて、学問の進展を目の当たりにしたような気がして、ちょっと感激しています。